HOW TO SKI

2016/05/24

取材協力:斑尾高原スキー場
整備されたゲレンデを滑るのは気持ちいいが、新雪が降った後のコースはひと味違った感動が待っています。ゲレンデによっては、非圧雪コースもしくはパウダーコースなどと呼ばれる、雪が積もっても圧雪せずそのままの滑れるコースを用意。敷地内の森を開放し、ナチュラルバーンのツリーランが楽しめるゲレンデもあります。その魅力と注意点、さらに滑るコツを紹介します。

北村明史【監修】

斑尾高原スキー場のスタッフとして働きながらツアースキーのガイドも務める、パウダーランやバックカントリーのエキスパート。斑尾高原で育ち、幼少時は競技スキーに没頭。その後スキークロスに転向し、4年間ワールドカップを転戦した経験をもつ。

非圧雪ってどんなところ?

圧雪車による整備を行っていないエリアが非圧雪。雪が降り積もったままの状態で、ゲレンデなら「非圧雪エリア」や「パウダーエリア」などと呼ばれています。ツリーランなどの自然地形は基本的にどこも非圧雪です。降雪後は粉雪のスプレーを上げて爽快に滑れ、整備されたコースを滑るのとはまた違った楽しさが味わえます。

非圧雪(パウダー)エリアとは

ゲレンデ内のコースは圧雪車をかけてコースをきれいなフラット状態に整備します。たくさんの人が滑ってデコボコに荒れたコースをきれいな状態にし、翌日にまた快適に滑れるようにするためです。

非圧雪エリアはこの圧雪車で整備がされていないところ。雪が積もったそのままの状態です。降雪後はサラサラのパウダーが味わえ、たくさん人が滑ったあとは天然コブができるなど、時期や天候でコンディションが変わります。ときどき圧雪車で整備し、その上に雪を積もらせて滑りやすくした非圧雪コースもあります。
降雪時の非圧雪エリアはどこもかしこもパウダーだらけ。ワイルドな斜面をダイナミックに滑れます。

ツリーランってどんな感じ?

森を滑るツリーランは、基本的に非圧雪エリア。木立を抜けながら滑らねばならず、コースと違って地形が複雑なこともあります。バックカントリーでツリーランを楽しむのなら、相応のスキルや知識、装備が必要です。近年はゲレンデ敷地内の森を開放し、裏山まで行かずともツリーランができる環境が増えてきました。木が少なく、距離が短くて優しい地形のツリーランから挑戦してみましょう。

なお、ゲレンデ内でのツリーランは、必ず許可されたエリアのみ滑走してください。ツリーランに挑戦する前にコース内の「非圧雪エリア」でパウダー滑走に慣れておくのがおすすめです。
木の間を縫いながらまだ誰も滑っていないきれいな斜面を狙ってラインを探るのがツリーランの醍醐味。

自然地形の注意点

滑走が認められているナチュラルバーンでコースを示す目印があれば、それに沿って進みましょう。また、木には近寄らないこと。木の回りは窪んで落とし穴のようになっており、積雪が増える穴が深くなり大変危険です。風などの影響で穴が見えなくなっていると、いきなり穴にはまる「落とし穴」のような状態に。穴から抜け出せないシリアスな事故の事例もあるので、木の近くは通らないようにしましょう。
ツリーランは整備されたコースではないので、いきなり段差があることも。ルート先の地形がどうなっているか常にチェック。コースの先を読みならが、安全に滑走を楽しみましょう。

天候や時期で雪質はころころと変わる

雪が降り続く厳冬期の非圧雪エリアは、底付きしない深いパウダーランが味わえる素晴らしいコンディション。しかし、温かくなって雪が溶けてくるとベタ雪でスピードが乗らなくなったりします。

溶けた雪が氷のように固まり、さらに雪が積もって、一見きれいな新雪に見えても下にいろんなものが隠れていたりします。また、雪の表面だけ凍ってその下が柔らかいクラスト状態になることも。1日のうちでも雪の状況は常に変化するため、天候や季節を考えながらコンディションを読み取りましょう。
曇りの日や雪の降りが激しいときは森の中は視界が悪いので、コースを見失わないようゆっくり滑っていきましょう。

パウダーの魅力 01/極上のパウダーで味わう浮遊感

非圧雪エリアの最大の魅力は、やはりパウダーラン。誰も滑っていない真っ白な雪の斜面を、自由なラインで思いのままシュプールを描くのはこの上なく爽快です。サラサラの粉雪を舞い上げながら、底付きしない深いパウダーに沈んで浮かぶのを繰り返す姿は、まるで雪の海原で波に乗っているかのよう。この浮遊感がパウダーランの最大の魅力でしょう。整備されたコースとはまた異なった、滑りきった後の達成感や充実感が得られます。
探せば荒らされていないパウダーが残っているはず。進むルートの先をチェックしながらベストなラインを探しましょう。

パウダーの魅力 02/地形は興味の付きない遊び場

ツリーランなどのナチュラルバーンには、天然のウェーブやU字の沢など、いろんな地形が点在しています。ウェーブを越えたりジャンプしたり、沢をハーフパイプのように登ったり、自然の地形は変化があってとても面白いものです。

雪は日々表情を変え、腰まで埋まるパウダーに当たることあれば、水気を含んだシャバ雪の日もあり、同じコースでも昨日と今日ではコンディションがまったく違うことも珍しくありません。それが飽きることなく楽しめる奥深さでもあります。
森の中でもちょっとしたコースのような広い斜面に出会えることも。攻めるラインを考えるのも楽しさのひとつ。

パウダーの魅力 03/森の中を自在に滑れる

滑走エリアとして開放された森の中は、進入禁止エリアを除き、どこを滑るのも自由です。落葉樹の森なら冬は樹の葉が落ちて視界が開け、夏の森より景色が広く感じられ、ライン取りも思い描きやすくなっています。

ショートターンで木立を通り抜け、ワイドバーンを狙って大きなロングターンを決めたら、地形でパウダーのスプレーを上げるなど、自分の滑りを思い切り出しきって自然と一体となった体験ができます。どう滑るかという決まりはなく、自然の中で自分の遊び方を見つけて楽しみましょう。
ナチュラルバーンでの滑走は、自然と遊んでいる気分になっておのずとテンションも高くなります。

滑りの総合力もアップ!

非圧雪やツリーランの滑走体験は、うねりや片斜面、段差などの自然地形への対応力が培われ、急な斜面変化へのリカバリー力も身についていきます。これらのスキルは整地されたコースでの滑りにも生きてきます。

ハイスピードでも安定したバランスを保ったり、ミスを瞬時にリカバリーできたり、大回り・小回りのターン変化もクイックかつスムーズにできるなど、整地の滑りで生きるスキルがたくさんあります。基礎スキーなど整備の滑りを重視する人でも、総合力アップのためどんどん非圧雪やナチュラルバーンにチャレンジしてみましょう。

身につけておきたい技術

非圧雪やツリーランでナチュラルバーンを滑るなら、ある程度の技術が必要です。止まる・曲がる・スピードダウンの基本は自在にできるようになっておきましょう。特にツリーランでは深い雪や悪雪に足をとられながら、木を避けて滑らなくてはいけません。整地できちんとスピードコントロールしたターンができるレベルに達しておくのが鉄則です。

整地のコースで止まりたいときに停止でき、思い描いたライン通りにきちんと滑れるスキルに達したら、コース内の非圧雪エリアでも練習し、慣れたらツリーランへとステップアップしていくのがベストです。
森の中は地形が平坦ではなく、樹木などの障害物もたくさんあります。これを避けられる技術を身つけてからトライを。
一般コースの脇に圧雪されていない部分が残っていたら、まずここでパウダーランの練習。

パウダーで起き上がれなくなったら

深い雪で転倒した際、ひと苦労するのが立ち上がること。スキーが雪に埋もれて身動きがとれなくなり、板を外すと今度は足が埋まり、手をついても埋まって支えられません。パウダーで埋まったときは、立ち上がるコツがあります。
浅い雪のときは、ポールを刺して支えにすれば起き上がれます。スキーを斜面の下側で横に揃え、山側にポールを付いて支えにし、腰を持ち上げるように立ち上がります。
雪が深くて立ち上がれないときは、スキーを脱いで雪に差し、その状態でビンディングを装着すればそのまま滑り出せます。スキーを刺す向きは斜面の下側。山側にポールを刺して支えにし、ビンディングを装着したらそのまま斜面の下へと滑りだします。

必ずヘルメットやプロテクターを装備!

ツリーランなど滑るときは必ずヘルメットを装着すること。さらにプロテクターなどで体を保護することも強くおすすめします。ナチュラルバーンは木や岩などの自然がそのままの状態のフィールドです、それらの障害物と衝突するとケガをするだけでなくさらにシリアスな事故にも繋がります。

バックパックを背負うと、いざというとき背中を守るプロテクターとしても役立ちます。荷物も持ち運べるので、ツリーランなどナチュラルバーンを滑る際は持参がおすすめです。

パウダーランが快適になるちょっとした小物

柔らかくて深い雪はポールを突くと埋まってしまい、腕をとられて滑りにくいことがあります。そこで役立つのが「パウダーリング」です。通常のリングよりも輪が大きく、深雪でも埋まりにくいというメリットがあります。
また、パウダーランではウエアのあらゆるところから雪が入り込み、インナーがびしょ濡れになることも。ジャケットやパンツ、袖口などから雪が入るのを防ぐ、パウダーガードがあると便利です。バックカントリー向けのアウトドアウエアはこの機能は必需品ですが、一般のスキーウエアでも付属するタイプがあるので、購入の際にチェックしてみましょう。
パンツにパウダーガードがあると非常に快適。手持ちのパンツに装着できる、パウダーガード単体でも売っています。
袖口のものはパウダーカフとも呼ばれ、この上からグローブを装着します。これも単体で売っています。

パウダースキーでもっと楽しく!

パウダースキーはファットスキーとも呼ばれ、一般的なスキーよりも板幅が太く、トップとテールが反っているなど非圧雪で浮力が出る形状になっています。踏み込めば幅広のスキーが圧を受け止め、自然に雪から浮き上がり、雪原を疾走するような爽快なパウダーランが味わえます。

ゲレンデによってはレンタルコーナーでパウダースキーを置いているところもあるので、取り扱いがあればぜひ体験してみましょう。

滑るコツ 01/ポジショニング

非圧雪やナチュラルバーンは雪に足を取られて、なかなか上手に滑れません。深い雪をスムーズに滑っていくには、ちょっとしたコツがあります。ポイントは重心を後ろに置いて積極的にスキーのトップを浮かすこと。

ノーマルスキーは整備されたコースでの滑走を想定しているため、パウダーでは浮力が足りず、滑走中にトップが雪に沈みやすいのです。パウダー滑走中は重心をやや後ろ側に置いた後傾のポジションを意識すると、トップが浮かしながら滑れるようになります。
ポールを突くときは手を前に出すように意識。後傾になりすぎて上体が遅れるのをカバーします。
パウダースキーを履いていれば、自然に浮力が働くのでいつものポジショニングのまま滑れます。
パウダースキーはビンディングが後ろにセットバックされているなど非圧雪での滑りを想定した設計になっています。

滑るコツ 02/ポイントは視線にあり

パウダーランに限らず、滑走中は常に進行方向を見て滑るのがスキーのセオリー。しかし、ツリーランやナチュラルバーンではいつも以上に周囲の様子をチェックしなくてはいけません。木を避けるラインや崖のような段差を回避するなど、素早く状況把握することが安全なルート確保に繋がるからです。視線は遠く、広く見て、先にある地形にあわせて的確な判断をしながら、安全・安心にナチュラルバーンを満喫しましょう。
ツリーランでは進む先の状況を常にチェックし、安全に通れる広いエリアを探しながら滑っていきます。

地形の遊び方

ゲレンデのコース内にはキッカーやハーフパイプを設置したスノーパークがあります。自然地形にもこれに似たものがあり、天然のスノーパークと言ってもいいでしょう。うねりのある片斜面に当て込んだり、小高くなったギャップや落ち込む地形でジャンプしたり、いろんな滑りが楽しめます。

U字の地形は両壁を行ったり来たりしながらハーフパイプのように楽しめ、壁を上ってスプレーを巻き上げたり、自然地形はアイデア次第で自由に遊べます。せっかく自然地形を滑るのだから、ただ通り抜けるだけではなく、飛んだり当て込んだり遊びながら滑りましょう。
壁を見つけたらまず上ってみる。地形を見つけたらどんどんチャレンジして経験を積みましょう。

ツリーランを滑るコツ

ツリーランでは小刻みなターンが有効。これは木を避けながら滑るからです。ポジションを低めにとると脚部が動きやすくなり、瞬時に滑る方向を変えるクイックな動きができるようになります。

ターンをしかけて踏み込むときはより深いポジションで沈みこみ、しっかり圧をかけると、スキーが雪面の反発を受けて浮いてきます。非圧雪でもクイックなスキーコントロールができるよう、小回りをマスターしておくことが必須です。
ターンの導入は高い姿勢から。そこから低いポジジョンを意識して沈み込むと、スキーが雪面の反発を受けて自然に浮いてきます。これを繰り返して連続してターンしていきましょう。

ツリーランの注意点

ツリーランは滑る前にライン取りを考えることが大切です。滑り始めのスタート地点で木の配置や斜面の状況を確認。どのラインを通ってどの方向に進むかイメージを固めておきます。雪のコンディションもチェックして、総合的に滑るラインを組み立てます。

森を滑りながら、途中で進む方向に迷ったら、立ち止まってコースを確認する習慣をつけましょう。ツリーランエリアにはコースを誘導する目印があれば、それにしたがってコースを進んでいきます。安心・安全にツリーランで滑りを楽しみましょう!

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