ゲレンデを颯爽と駆けていくスキーインストラクター達。誰もが憧れてしまう仕事だけど、インストラクターになるためのステップについてきちんと知っている人は案外少ないのではないでしょうか。今回の主人公、大学生のユキとケントも同じでした。ところが一枚のポスターから彼らのウインターシーズンはガラリと変わってしまったのです!

憧れのインストラクターになるまでを、ユキとケントのストーリーで解説!

公益社団法人日本プロスキー教師協会(以下SIA)及び公認スキー学校では、スキーショップや大学の学生課、宿泊施設などでインストラクター募集の告示を行っています。
一般的にスキースクールのアシスタントや研修生になるためには、一定の技術を持っていることが求められていますが、それは決して高いものではありません。多くのスキースクールでは、国際スキー技術検定シルバーもしくはSAJ2級程度を採用条件としているところが多いようですが、これらはあくまで基準であり、本人の「やる気」しだいで緩和されることも少なくないようです。また、インストラクターは自分の上手さをひけらかす仕事ではありません。スクール入校者に対し、上達への適切な道筋を示してあげることが何よりも大切です。
研修とは、スクールスタッフ間で滑りの技術をトレーニングしたり、指導方法について雪上でディスカッションしたりすること。新人インストラクターにとっては、先輩の技術、知識を学ぶためのもっとも大切な時間です。先輩達は教えるプロですから、説明もお手本の滑りもさすがの一言。ただし疑問に思ったことやどうしてもできないことがあったら、積極的に質問したり滑りを見てもらうなどしましょう。あくまでも自主性をもって望むことで、研修の時間をより有意義にすることができますよ。
スキースクールのインストラクターには女性も多くが活躍しています。女性インストラクターが校長だったり主任教師を務めているスクールもありますよ。
「SIAのインストラクターになるには、ステージ1を取得して準会員登録が必要」

原則的にSIAの公認スキー学校でレッスン活動を行うには、同協会への準会員登録が必要となります。これには「ステージ1」という資格の取得が求められ、そのための指導や研修は各スクールによって行うことができますが、学科と実技の試験があります。
スキー及びスノースポーツ教師に求められる要素として、SIAでは以下のことを挙げています。

■人格と品位
受講者が「教わって楽しそう」「上手くなりそう」など 期待や希望が持てるような態度・言葉づかい等が必要だと考えます。 受講者には節度ある親しさで接し、平等・公平、辛抱強い指導が必要です。
■専門知識と一般常識
技術や用具、山岳の危険や気象・救急法などの専門的な知識はもちろんのこと、 社会人としても受講者から信頼される一般常識の持ち主でなければいけません。
■指導能力
気象条件(天候・雪質等)や受講者の用具・体力・技術レベル、指導目標などに応じて、 受講者に合わせた斜面・練習内容・滑走距離を選びわかりすい言葉で説明できることが求められます。
■技術・技能
指導に必要で応用自在な技術力を持つことが必要です。 説得力のある的確な見本を示す技術もそのひとつです。
検定会の様子。学科ではSIAオフィシャルスキー&スノーボードメソッドをベースにしながらプロ教師として活躍するための幅広い知識を、雪上では指導種目や技術表現、また実技試験合格のためのポイントを学びます。
スキースクールで働くということは、ただレッスンを担当するだけではありません。用具の管理や受付業務、お客様の案内から、レッスン料金の取り扱いまで、その仕事は多岐に及びます。
先輩の前で初めて滑りを披露するのは誰だって緊張するもの。無理にカッコよく滑ろうとせず、自分の滑走技術をしっかり見てもらうという意識で滑るのが重要です。荒削りだったり、クセがあったりは気にせずに。それはこれからの練習で直していけばいいんです!
スクールのスタッフは自宅から通っている人もいれば、寮や宿舎(スクールが常駐するホテルの場合もある)に寝泊まりしている人もいます。自宅がスキー場の近くという場合を除いて、ほとんどは寮や宿舎にお世話になることでしょう。団体生活ですからルールやマナーをきちんと守る必要がありますが、志を同じくする者どうし、貴重な体験となるはずです。先輩達からの何気ない言葉が大きなヒントになったり、スタッフの一員として生活するすべての時間が、インストラクターとしてのスキルを育ててくれます。

「夏の仕事はどうしてるの?」

大友健さん(ニセコアンヌプリスキー&スノーボードスクール所属)

北海道蘭越町出身、現在44歳の大友さんはインストラクター歴25年のベテラン。夏の仕事は家業の農業(米、麦、大豆、種芋、枝豆など)に就いています。インストラクターとしての活動拠点であるニセコは、今や世界的スノーリゾートであり、パウダースノーはもとより食の魅力を求める海外からのビジターが多いことから、「世界のニセコで、地元農産物をもっと使ってもらえるように試行錯誤中」だとか。

Q:夏と冬を両立する秘訣は?
「スキーがオフとなるシーズンの仕事も徹底的にやることで、周囲からの信頼貯金も増えて、結局は冬の活動に融通が利くようになります。また、一年を通じて何かに取り組む意識は、高いモチベーション維持につながります」

Q:初レッスンの思い出は?
「北海道弁が出ないように気をつかいました(笑)」
夏の仕事として農業に従事している人は多いですね。また冬は雪山、夏は海という生活をしている人もいます。

元SIAデモンストレーターで、デモ選優勝の経験もあるトッププロ谷藤昌司さん(菅平ハイランドプロスキースクール所属)は地元の北海道標津町で、サケ・マス定置網漁をしています。

SIA教育部スノーボードデモコーチを務める出口超さんは、京都の若狭湾で「若狭ダイビングサービス」を主宰しているダイビングインストラクター&ガイド、SUP(スタンドアップパドルボード)ガイドです。

ほかにも、ジムのインストラクターをしたり山小屋で仕事をしている人もいますし、ピアノ教師などスポーツとは無関係の仕事についている人も少なくありません。また日本が夏の時期に冬となる南半球でインストラクターやスキーガイドをして、一年中滑っているという人もいますよ!

SIAの公認スキー学校(全133校)は日本各地に広く展開しているため、各校ごとに形態も違い、それぞれの夏の仕事も様々です。個々の環境や条件に合った仕事で夏と冬を上手に両立することで、プロスキー教師としてのモチベーションを高めています。
インストラクターは滑りが上手いだけでは務まりません。わかりやすい説明、お客様の要望に的確に応えていく引き出しの数、正確で美しい運動表現、そして何よりも安全を確保する状況判断能力が求められます。レッスンはサービス業のひとつですから、お客様とのコミニュケーションをきちんと図り、楽しくしかも有意義な時間だったと感じてもらえるレッスンをすることが大切です。
インバウンド需要のため、英会話のスキルが活かせる!

日本のスキー場は、海外から多くのスキーヤー&スノーボーダーが訪れるメジャースポットになりました。近年は東南アジアからのお客様も急増しており、その多くがスキー初体験もしくは初級者であることから、スキースクールの役割と存在意義も高まっています。SIAの資格を取得する際の学科試験に英語があることからわかるように、英語レッスンのニーズは年々高まり、一定の英会話スキルを持つ人であれば採用のとき有利に働くことでしょう。
インストラクターと一般上級者の違いは、「その運動を理論で理解しているかどうか」、さらにそれを「わかりやすい言葉で正しく的確に人に伝えられるか」という点です。ただ単に速く滑れたり、コブ斜面をダイナミックに滑れるだけでは優れたインストラクターにはなれません。インストラクターは、どんなに自分の技術が向上しても、実際のレッスンで使う種目「プルークボーゲン」や「横滑り」などの練習を怠たらないもの。スタッフ研修では、それらのトレーニングに加え、指導法について実際のケーススタディをまじえた議論がされることがあります。これはインストラクターにならなくては体験できないことです。
SIAの教師資格を受験するには所定の救命救急講習受講が必要。

受験前にはSIAが認めている救命救急講習を受講しなければなりません。
(消防署普通救命講習、消防署上級救命講習、日本赤十字社救急法一般講習、 日本赤十字社救急法救急員養成講習)

朝の準備や受付の手伝い、研修ではレッスンデビューに備えて先輩からの技術指導や救命救急講習受講など、盛りだくさんの日々を過ごすユキとケント。

次回の第2話では、二人の初レッスンから資格取得までを追いかけていきます!

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