まるでサーカスのように軽々とジャンプしたり、スタイルを競ったり。ゲレンデで見かけるカッコいいアクションこそ、スノーボードの魅力。そんなエキサイティングな遊びを存分に楽しめるのが「パーク」だ。さぁ、トリックの基本をアタマに入れたら、思う存分飛んで跳ねて、雪上のアクロバットにチャレンジしよう!
写真:桑野智和  テキスト:林拓郎
取材協力:奥只見丸山スキー場

石田貴博(いしだ・たかひろ)

1984年生まれ。新潟県出身。「TOYOTA BIG AIR」など、国内の多くの大会で好成績を残すと同時に、トリプルバックフリップや1440(空中での3回転スピン)といった印象的な大ワザを繰り出すジャンプの名人。近年はワールドカップのスロープスタイルを転戦。競技のセンスと世界に通用するトリックを磨き込んでおり、プロ10年目のライダーはさらなる進化を遂げている。

【スポンサー】BURTON、OAKLEY、ムラサキスポーツ、SHIFT

パークってどんな場所?

基本的にゲレンデの中はジャンプ禁止。たくさんの人が利用する場所であると同時に、飛んだ先に誰かが滑ってくると事故につながってしまう。けれどジャンプはスノーボードを楽しむ上では欠かせない。そこでジャンプのようなエキサイティングなアクションを自由に楽しめるよう、特別に整備されているのが「パーク」だ。

その名の通り、パークはフリースタイルの公園であり遊園地。自由にアクションを楽しむことができる。が、大事なルールがふたつだけある。ひとつはジャンプなどの着地点に立ちとまったりしないこと。着地に誰もいないことが事故を避ける最も有効な手段。転んだときは素早く避けること。もう一つは、前の人を追い上げたりしないこと。パークは自分のペースで滑っていい。前に遅い人がいたら待ってからがエチケットなのだ。
写真は新潟県の奥只見スキー場。たくさんのジャンプ台が並び、好きなように楽しめる。
ジャンプだけでなく、レールもパークには欠かせないアイテムだ。パークに行けば上手い人がたくさんいる。良いお手本を見ることも上達の秘訣!

パーク向きのギア

実はパーク用のスノーボードは少し短めがおすすめ。短めのスノーボードなら動きも軽く、扱いも簡単だ。注目はノーズ(前側)とテール(後ろ側)が同じ形の「ツインチップ」。これなら「スイッチ(前後逆にして滑ること。テールが前になる)」になっても、いつもと同じようなフィーリングでトリックを楽しむことができる。

天気の良い春なら、ウエアは暑くて必要ないほどになる。ボトムは濡れないようにスノーボードウエアを履いて、トップはパーカーなどでオシャレを楽しむのもおすすめ。手袋は春用の薄手のものを使うようにしよう。運動量の多いパークでは、ゴーグルよりもサングラスの方が快適なことも。写真で使用しているスノーボードはBURTONの「Support Local Process Off-Axis Snowboard」。

パークを意識したセッティング

クルクルと回るスピンを実現して、前向きも後ろ向きも関係なく滑る。そんな軽快なフットワークを実現するためには、ゲレンデとは違ったパーク用のセッティングにするのがコツ。それが左右のバインディングの中間点とスノーボードの中心点とを一致させる「センター」という取り付け方法。これなら常にスノーボードの中心に乗っているので、回転はスムーズ。

さらにスイッチになってもスノーボードの操作性が大きく変わらないのでトリックをかけやすくなる。パウダーには決して向いていないけれど、パークをメインに滑る人ならセンターに取り付け、スイッチになっても身体のひねりが変わらないよう、バインディングの角度も前後同じくらいがおすすめ。
スノーボードのどの位置に、どのくらいの角度でバインディングを取り付けるかをセッティングと読んでいる。セッティング次第でスノーボードの乗り心地は大きく変わり、さまざまな特製を引き出すことが可能になる。
センターに取り付けると、バインディングからスノーボードの端までの距離は、ノーズもテールも同じになる。これがトリック向きになる理由。

オーリーはすべての基本

●Side view
ジャンプを安全に楽しみたい。早く上達したい。そう思うなら、まずは平地でとまったままオーリーの練習をしてみよう。ポイントは前脚を引き上げるのではなく、後ろ脚一本で真上に伸び上がるようにすること。前脚をムリに引き上げると上半身前掲し、結果的に頭が下がってバランスが崩れてしまう。
●Front view
パークのジャンプは何もしなくても、自動的に飛べるような地形になっている。その地形にタイミングを合わせるために、後ろ脚だけでちょっとだけ跳ね上がってやればOKだ。真上に伸び上がることができれば、反動を使って空中姿勢も安定。スノーボードを身体に引き寄せたコンパクトな体勢をとることができる。ジャンプでのオーリーは良いことずくめなのだ。

決められたライン以外で遊ぶ

もちろんそれぞれのスキー場にあるパークにもよるが、コンパクトなパークなら、ラインは一本だけかも知れない。が、少し規模の大きなパークなら左右のラインを自在に行き来しながら、自分なりのラインで楽しむことができる。

気に入ったアイテムを上手く滑りつなぎながら、その流れが途切れないようなトリックを入れていく。これがパークを個性的に楽しむ秘訣。ワザ数が多ければ多いほど、ラインの組み合わせは増えてくる上、上手くなってくれば思いもかけなかったようなラインで楽しむこともできるようになる。決められたラインから外れる、そうすることで見えてくる楽しさを探してみよう。
ジャンプの後で右に行くか、左に行くか。それによってスピンの方向が変わってくることも。
いちばん好きなアイテムにはフルスピードで入って、スタイルをバッチリ決めたい。もしくは、あえてスピードを抑えてレールで遊ぶ。着地の体勢から、次のジャンプのトリックを決めよう。

ストレートジャンプの基本

ジャンプこそパークのメインディッシュ! とは言いながら、いきなり飛ぶのはケガのもと。安全に楽しくパークで滑るなら、少しずつステップアップすることが大切。はじめはジャンプに慣れるところからスタートして、徐々に複雑なトリックを取りいれていこう。ポイントは慌てないこと。基礎をしっかり身につければ、その後の上達も早い。まずはジャンプの4つの基礎を確実にマスターすることから始めよう。

ストレートジャンプをスムーズに飛ぶ秘訣はたったひとつ。それは「低い姿勢でアプローチ」することだ。注意したいのは、低い姿勢=腰を低くする、ということ。決してアタマを低くして構えることではない。腰を低くするには、ヒザと足首をしっかり曲げることが大切。感覚的には太ももが水平になるまで腰を沈めて、空気イスの体勢を作ることだ。この時、腰は曲げずに上半身は立てておく。

この体勢でアプローチすれば、離陸で伸び上がるだけでオーリーになる。低い体勢から伸び上がっているので、反動で空中ではスノーボードを身体に引き寄せることになり、空中姿勢も安定する。着地に向けて自然に身体が伸びていくので、着地の衝撃もスムーズに吸収できる。
離陸の瞬間は伸び上がるだけ。飛び上がらないので、テールまで使ってジャンプできる。伸び上がったからこそ、空中シ沿いをコンパクトにまとめることができるのだ。

ノーグラブで飛んでみる

低い姿勢でのアプローチができれば、ジャンプは簡単。まずは小さなサイズのジャンプ台でトライを始めよう。どのくらい小さなジャンプ台が適しているかは、その人次第。だが、ひとつの基準として、アプローチで恐怖心を持ってしまうようならワンランク小さなものに移動すべきだ。

ワクワク感を楽しめるようなら、低い姿勢を意識しながらアプローチ。離陸ではジャンプのタイミングに合わせながら、軽く伸び上がってみよう。大切なのは、スノーボードを身体に引き寄せることを意識できるかどうか。きちんと意識できるようになるまで、次のステップには進まない方がいい。急がば回れ、なのだ。

グラブにトライ! /インディー

空中でスノーボードを身体に引き寄せられるようになる頃には、ジャンプそのものがまったく怖くなくなっているはずだ。こうなるとしめたもの。次のステップ、グラブに進もう。グラブは空中でスノーボードをつかむこと。こうすることで体勢がよりコンパクトになり、姿勢が安定するようになる。

最初にトライするのはインディーだ。決してスノーボードをつかもうとするのではなく、手を伸ばしたらそこにスノーボードがある。それくらいナチュラルにスノーボードを引き寄せることが大切。つかもうとすると頭が下がってしまってバランスが崩れてしまう。まずはスノーボードに軽くタッチするところから始めてみよう。
グラブするのは両足の間、つま先側のエッジ。グラブしない側の手を大きく引くとバランスがとりやすい。

グラブにトライ! /メランコリー

●Side view
●Back view
メランコリーは前側の手で、かかと側のエッジをつかむトリック。しっかりとスノーボードを引き寄せることができれば、前の手をお尻の下あたりに伸ばすだけでグラブできる、簡単なトリックだ。

メランコリーの特徴はコンパクトな体勢。空中姿勢が安定するのでバランスを崩しにくく、不慣れなジャンプでも安心して飛ぶことができる。ポイントは前脚。グラブしたら、少しだけヒザを伸ばすようにしてスノーボードを前に押し出すようにすると、キレイな形にすることができる。
グラブするのは両足の間、かかと側のエッジ。前脚を伸ばして、スノーボードを押し出すようにするのが、スタイリッシュに仕上げるコツ。やはりグラブしない手は横に突き出すようにするとバランスがとりやすい。

グラブにトライ!/ノーズグラブ

●Side view
●Back view
前の手でノーズをつまむようにグラブ。ノーズグラブは独特のバランスで形を作るトリックだ。一見するとスノーボードを身体に引き寄せないように見えるが、そうではない。主に前脚だけを使って引き寄せる、といったイメージ。そのため、ノーズが目の前に近づいてくる。あとはそのノーズを触れば、ノーズグラブの完成。数あるグラブの中でも、つかむ場所が目の前。しかもハッキリ見える所にあるのでチャレンジしやすいトリックなのだ。
空中ではノーズに近づくのではなく、前足を曲げてノーズを引き寄せる感覚。バランスをとるため、後ろの手はテール側に伸ばす。身体の重心はすべてスノーボードの上に乗っている。

グラブにトライ! /テールグラブ

●Side view
●Back view
前の脚を引き寄せたなら、次は後ろの脚。後ろ脚を身体に近づけてグラブすると、今度はテールグラブというトリックになる。テールグラブはグラブする場所がまったく見えないので感覚でつかむしかない。とは言え、ここまでくればスノーボードを見ずにつかむことはそれほど難しくはない。

離陸したら後ろ脚の引きよせを意識して、前脚でスノーボードを押し出してやる。すると腰のすぐ後ろにテールが近づいてくるので、あとはグラブするだけ。着地は身体をコンパクトに保っていれば自然にバランスが取れる。
空中では後ろ脚に乗るのではなく、後ろ脚だけで引き寄せるイメージで。インディーと同じように、グラブしない側の手を開くようにするとバランスがとりやすい。

スピンに挑戦!

ジャンプに慣れたら、いよいよスピンに挑戦だ! スノーボードのスピンが上手くいくかどうかは、離陸するまでにほぼ決まっている。正しい動作と正しいタイミングで踏み切れば、あとはオートマチック。今まで見たことのなかった風景を見ながら、気持ちの良い浮遊感を楽しむ。おまけに着地が決まったときの爽快感は格別。そんな新しい楽しみを与えてくれるアクションにトライしてみよう。

オープン180 インディー

●Side view
●Back view
スピンの基本トリックは180°(ワンエイティ)というわけで、まずは胸側に回るオープンサイドから練習してみよう。スピンと言うとどうしても身体を大きく回すことを意識してしまうが、180までなら身体を少しひねるだけでじゅうぶん。基本的な動作はストレートに飛ぶジャンプと何も変わらない。

コツは離陸の瞬間に少しだけ身体を開いておくこと。前の手で身体の開きをリードすると簡単なので、残った右手でグラブした方が簡単だ。というわけで、おすすめはインディー。写真の左肩を回す方向に開きながらグラブ。腰が180°回ってしまえば、あとは進行方向を見ているだけでOKだ。

ブラインド180 ミュート

●Side view
●Back view
慣れてくればほんの少しのきっかけでスルッと回ってしまう。それがブラインドスピンの特徴。中でも180は、振り返ることすら必要ないと言われている。

ポイントになるのは横からのアングルの4コマ目。離陸と同時に両脚の間から雪面を見下ろすように視線を下げていく。たったこれだけでスピン開始。スムーズに回すためには肩を回しこんだ方がいいので、その動きを誘うグラブを取りいれよう。前の手で両脚の間、つま先側をつかむミュートならスムーズにスピンを継続できる。

飛んでいる間、視線はスノーボード越しに雪面を見続けること。着地までのタイミングは、雪面との距離を測りながら合わせていく。

オープン360 ミュート

●Side view
●Back view
離陸する前から、回転する方向に向かって上半身を回し始めることを「先行動作」と呼んでいる。空中で一回転する360(スリーシックスティ)からは、いかにもスピン!という先行動作を入れていくことになる。

横からのアングルを見ても分かるように、離陸の前から身体はオープン方向に回り始めている。そして空中に飛び出ると同時に、離陸したジャンプ台を振り返るように肩を回していく。この肩の回転が上半身をねじっていき、ねじりは腰に伝わり、腰が回るとスノーボードが回転する、というイメージ。つまり360では肩をいかに安定して回していくかがポイント。ここではミュートグラブで、スノーボードと身体の軸が一致させて空中でのバランスをキープした。

ボックスで遊ぼう!

パークにあるもう一つの超目立ちアイテム。それがボックスだ。表面は滑りやすいプラスチックなどで作られており、エッジはまったく効かない。つまり、乗ったらあとはバランスを保ちながら滑り抜けるだけ! このタイトなバランスの中で、いかにトリックを繰りだしていくかがボックスのおもしろさ。難しい、だから悔しくて何度もやりたくなる。そして何度もやるからこそ、思い通りに滑れたときの気持ちよさは格別なのだ。

ボックスは高さ、幅、長さ、斜度などがさまざま。慣れないうちは入口がそのまま繋がっているものが安全だ。また、ボックスの斜面は硬い樹脂などでできている。エッジは効かないので、すべてソールを使ってコントロールすることになる。

ボックスの基礎

ボックス上ではまったくエッジが効かない。つまり、入ってしまったらラインはもちろん、スピードを調整することも不可能。というわけで、まず一番大切なのはラインだ。ボックスの入口から出口までをイメージして、そのラインに乗れるようなアプローチしよう。

スピードも同じ。乗ってしまうと減速はできないので、速すぎるアプローチはトリックにつながらない。かといって遅すぎるとタイミングが取りづらい。このあたりの「ちょうどいいスピード」はボックスやワザによっても変わってくる。スピードに関しては経験を積んで、ちょうどいい頃合いを身体で判断するのがいちばんだ。

ボックスの上でどう動きたいのか、どんなトリックをしたいのか。具体的にイメージしてラインを決め、その延長上でアプローチしよう。

ボックスに挑戦! /50-50

●Side view
●Back view
真っ直ぐ入って真っ直ぐ抜ける。これも立派なボックストリックのひとつで、「50-50(フィフティ・フィフティ)」という名前がついている。50-50はボックスのバランスを練習するには最適のトリックだ。雪の上と同じ体勢で乗っているつもりでも、わずかな体勢の乱れでバランスを崩したり転んだりしてしまう。エッジが効かないことが、これほど難しいのかと思い知らされるトリックなのだ。

が、慣れてしまえば雪とは違ってスルスル滑る感触や、ピンポイントでバランスを取る楽しさに病みつきになってしまう。速すぎないスピードで乗って、ボックスの上ではリラックスして遠くを見るようにしよう。

ボックスに挑戦!/ノーズプレス

●Side view
●Back view
50-50ができるようになったら、ノーズだけに乗ってみよう。50-50よりもさらに狭い範囲で滑っていくトリックはバランスも一段とシビア。それでいて、ノーズだけに乗るというアクションが必要になってくる。

ノーズプレスはノーズだけに乗ろうとしては上手くいかない。実は後ろの足でスノーボードをテール側に押し出して、ノーズを腰の真下に引き込んでくるのがポイント。こうすることで自然に身体は前のめりになり、さらにノーズに乗り込むことができるようになる。バランスを取るのは両腕。写真のように一直線に伸ばして水平にキープすることができれば、よりきれいにノーズに乗れるようになる。

ボックスに挑戦!/テールプレス

●Side view
●Back view
前脚でスノーボードをノーズ側に押し出して、腰の真下にテールを引き込んでくる。ノーズとはまったく逆の動きをすれば、テールだけに乗るテールプレスの完成だ。テールプレスも両腕を大きく伸ばしてバランスを取ることが大切。腰が折れてしまうと上半身の重みが上手くテールに乗らなくなるので、しっかり遠くを見ながら身体を立てておくことが大切だ。

テールプレスは上手くなってくると、どんどんノーズを上げていくことができるようになる。このノーズの上がり方が大きければ大きいほど目立ち度はアップ。難しいバランスを起用に乗りこなして、パークの人気者になろう!

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