五輪種目にもなったスキーハーフパイプ。アクロバティックなイメージが強いかもしれませんが、実際は子供でも楽しく遊べる身近なアイテムなんです。まずはハーフパイプを知るところからご紹介。スキーの可能性を一緒に広げてみませんか?
写真:桑野智和  テキスト:毛利洋介
取材協力:奥只見丸山スキー場

モデル&解説/津田健太朗(つだ・けんたろう)

1983年生まれ。石川県出身。2014ソチ五輪スキーハーフパイプ日本代表。2005年、当時国内最大級の大会カナダカップビックエアで優勝。その後、拠点を海外に移し大会を転戦。世界で戦える数少ない日本選手の一人。ハーフパイプだけでなく、ビックエア、スロープスタイルなど全種目で日本トップレベルの実力を持ち、世界の最前線で身につけてきた技術論をもとに指導者としても活躍中。

【スポンサー】STRICTLY、GOLDWIN、SCOTT、LEVELgloves、SALOMON、ARKprotector、ELMcompany、VailSkiShop、SnowParkOze-Tokura、SNOVA溝の口R-246、S-AIR

ハーフパイプってどんな場所?

ハーフパイプは遊び感覚満載の雪のブランコ。文字通り、円柱を半分にカットしたような形のコースです。スケートボードなどでも同様の形のアイテムがあるので、目にしたことがある方も多いでしょう。その中をブランコのように往復し、斜面を滑り降りるのが一般的な遊び方です。

雪の造設物なので、スノーパークよりも少し身近に感じてもらえるかもしれません。レベルの高いスノーボーダーのための場所のようなイメージがあるかもしれませんが、普通に滑走できる人ならスキーヤーでも十分安全に楽しめるものです。きっと今まで知らなかったスキーの新しい楽しみ方を知ることになるでしょう。ぜひトライしてみてください。

どんな道具を揃えたらいいの?

ハーフパイプで遊ぶために必要な道具は、スキー板、ブーツ、ストックなど、普通にスキーをする道具と特に変わりません。もちろん今、使用している道具でハーフパイプを遊ぶことは可能ですが、より楽しく遊ぶためにも専用の道具をおすすめめします。
まずはスキー板。スノーパークでは板の後ろの部分も反り返っているツインチップスキーと呼ばれるスキー板を使用します。ビンディングの位置も少しセンター寄りに付いています。この板は後ろ向きで滑ることも可能です。
普通のスキー道具と一番差があるのがスキー板なので、できれば板だけでも用意できるといいでしょう。あとはそこまで大きく変わりませんが、ブーツは比較的柔らかく軽いタイプのもの、ストックも普通に滑る時より若干短めのものが多く使われています。

ツインチップスキーの特徴

ツインチップスキーの一番大きな特徴はテール(スキー板の後ろの部分)が反り返っていることです。これによりスイッチ(後ろ向きで滑ること)が可能になり、遊び方が倍増します。センター寄りにビンディングを取り付けることが多いのもスイッチの時に板の前後が入れ替わる為と考えてよいでしょう。最近は、軽くて取り回しが楽な板が主流です。

安全に楽しむために

ハーフパイプと聞くと怪我のイメージが強いかもしれませんが、本来防げたはずの怪我が多いというのも事実。後悔先に立たずという意味では、ヘルメット、プロテクターの着用をおすすめします。特にヘルメットは海外では着用義務のあるところも多く、日本は少し遅れています。

まずは自分が入ろうとしているハーフパイプがどんな設計なのかしっかりと確認しましょう。この行程を抜かしてしまい、最初から猛スピードで入ってしまったために怪我をしたという話はよくあります。また、ハーフパイプは気候などによっても環境が大きく変化するアイテムです。オープンしたての朝とクローズ直前ではまったく別の状態になっていることもあるので、整備状況などにも注目して遊ぶようにしてください。

アイテムをチェックしよう!

ゲレンデ内には、なかなかハーフパイプのような形の場所はありません。きっとハーフパイプでは今まで味わったことのない感覚を体感できるでしょう。基本的なスキーの技術は変わらないので、段階的な練習法とルールさえ押さえておけば誰にでもトライできます!

まずはハーフパイプの本当の形を知りましょう。名の通り、まったくの半円かと言うとそんなことはありません。実際は断面図のように、水平な底面ボトム、円弧状のトランジション、リップに延びる垂直なバーティカルによって形成されていて、かまぼこをひっくり返したような形になっています。

日本では気候的にも形状の維持がなかなか難しく、図のようにしっかりとした形のハーフパイプは少ないのが現状です。アイテムの難易度はスノーパークのジャンプ台と比べると、設計自体で大きく変化することはありません。その分、滑り手の方でコントロールしなければならないことが多くなってきます。初心者の人は段階的に遊び方を覚えていきましょう。また、ハーフパイプの場合、気温や気候などによって状況が大きく変わるのでよく注意してください。

ハーフパイプ独自のマナー

また、プラットフォームを歩いて上がる時はリップの近くを歩きすぎないように気をつけましょう。

基本姿勢の確認

基本姿勢は肩幅程度のスタンスで、真っすぐ立っている状態からストンと重心を落とした、いわゆるスキーの基本姿勢と変わりません。ハーフパイプでは、登りの動きと下りの動きが繰り返されるため、いつの間にか後傾気味になってしまったり、姿勢が崩れることがよくあります。少し前傾をキツめに入れたくらいがちょうどいいと思います。

力みすぎる必要はありませんが、意識的に身体を絞めて、姿勢をキープする方法を覚えましょう。腰や腹筋あたりを意識すると分かりやすいかもしれません。
平地で姿勢をチェックしてみよう
ハーフパイプはスノーパークと比べると滑走技術が重要になってくるので、まずは平地でしっかりと基本姿勢をチェックしてみてください。

ハーフパイプに慣れる01/リンクする上下運動と上下位置

ハーフパイプのような形状はなかなか普通にスキー場を滑っていても体験することはないと思います。最初はこの特殊な形に慣れるところから始めてみましょう。まずはボトム部分とトランジションの下方の1/3程度だけを使って浅めにターンをしてみましょう。

低速で構いませんので、足は浅めの八の字気味でも大丈夫です。ターンの弧とハーフパイプでの位置(高さ)がリンクしているのを感じると思います。慣れてきたら、頂点で少し真上に伸び上がって抜重してください。ブランコの要領で段々スピードが上がっていくのを楽しんでください。

よく見てみると、スキー場のコース脇にも同じような斜面を見つけることができると思います。もちろんそこでも練習ができますし、逆に言えばハーフパイプを練習することで遊べる場所も増えるということなんです。

ハーフパイプに慣れる02/トランジションでの加速を味わおう!

トランジションの2/3くらいまで使って、もう少し上まで行ってみましょう。浅いターン弧で上部まで行けるようになっていれば、ハーフパイプの形状に慣れている証拠と言ってもいいでしょう。スピードもかなり乗っている状態だと思います。そうしたら次はターン弧を深くしてみてください。

登りがキツくなるので、上がっていく時に減速しますが、そのぶん下っていく時の加速も感じることができると思います。浅くターンしている時よりも後傾になりやすいので基本姿勢のイメージを強く心がけておきましょう。

また、頂点に来た時の斜面の角度もキツくなってきます。真上に伸び上がる時に、浅いターンの時よりも身体の縦の中心線が斜面に対してほぼ垂直になるようなってくるはずです。重心は常に両板の中央にあるように両足で伸び上がるように気をつけましょう。

ハーフパイプに慣れる03/ありがちな失敗例2選(後傾、外倒)

初心者に多くありがちな代表的な失敗例を2つ紹介します。1つ目は後傾です。繰り返される動作の中で後傾になる人が非常に多く見られます。ハーフパイプの場合、それでもターンしようという意志がある為に内足のテール側に加重してしまい、バランスを崩す原因になってしまいます。ターンの頂点で外側の手を斜め前に出すようにして身体を前に持っていくイメージを練習してみてください。
2つ目はハーフパイプの壁に寄り添うように滑ってしまう外倒です。外足が曲がって、身体の縦の中心線が地球と垂直になっているのが分かると思います。こうなりやすい人は浅めのターンからやり直し、ターンの頂点で身体がリラックスし、両板の中心に位置するように練習してください。体重が乗り切ってしまっているのでこのまま無理に外足を伸ばそうとしても上手く伸びないと思います。

動きをマスター01/ドロップイン

ハーフパイプの形状に慣れたらいよいよトリックの練習です!重心のコントロールやタイミングを覚えていきましょう。ここまでの基本練習をしっかり身につけていれば意外にすんなりできてしまう人もいると思います。上手くいかない時は基本に立ち返ってみてください!

ハーフパイプの最初の難関と言えばドロップインです。しっかりイメージを作ってから練習しましょう。もちろん、最初は無理をしないで中央からスタートし、ボトム部分からハーフパイプに入るようにしてください。

では、まずはアプローチです。リップのラインに平行に進みましょう。必要以上にスピードをつけないように注意します。ハーフパイプに入る時は、ボトムに向かって飛び降りるのではなく、上半身が壁に対して垂直になるように前に落とし込んでいきます。なるべく壁の上部から雪面とスキー板が接するようにイメージしてもらうと、ボトムまでジャンプしてしまうことはなくなるかと思います。

斜面に対して垂直だった身体を急に水平状態に持っていくので、最初は真っ逆さまに落ちていくように感じると思いますが、重要なテクニックなので何度も練習してください。
斜め後ろからみたドロップイン

動きをマスター02/ジャンプへの道のり

ハーフパイプでの初心者の大きな目標と言えばジャンプだと思います。スピードに任せて飛んでしまえば、飛び出すところまではできるかもしれませんが、着地はきっと上手くいかないことでしょう。段階的に練習して正しい飛び方を覚えてください。ターンを練習した時と同様に、深めの弧を描きながら、頂点に向かって軽くジャンプをしてみましょう。

飛んでいる間に、身体を次に行きたい方向へ向けてあげると、自然とスキー板も向きが変わると思います。この時、下の失敗例の写真のように進入角度が壁に対して真っすぐ過ぎると、頂点でのジャンプが難しくなってしまいます。たとえジャンプができたとしても180度の方向転換が必要になってくるので、斜めに入ることを意識してください。ジャンプの時に外側の肩を上げるようにイメージするとやりやすいでしょう。
失敗例

動きをマスター03/空中に飛び出す

まず、「ジャンプへの道のり」でのジャンプの方法は、空中での方向転換の感覚を覚える為にする練習だったということを理解してください。リップで同じようにジャンプしてしまうと壁に対して垂直に蹴ってしまい、ボトムの中央に落ちてしまうこともありますので注意しましょう。蹴って飛ばなくても、しっかりと壁を登れるようになれば、一定のスピードがつけばリップから抜けられるようになってきます。

ハーフパイプの場合、滑りを練習して加速することが、ジャンプへの近道だと思ってください。飛び出したら、リップの先に壁が延長しているようなイメージで、空中をターンしているように方向転換してみましょう。写真を見てもらうと分かると思いますが、上半身が雪面に対して垂直になるタイミングはありません。スノーパークでのジャンプ台でのイメージと混ざらないように注意しましょう。

動きをマスター04/グラブにトライ!

ハーフパイプはスノーパークのジャンプ台と比べても、技をするまでのハードルが高いアイテムです。選手クラスになると技も必要ですが、一般的にはジャンプの高さで評価が決まると思って構いません。無理に技をすることを目指すのではなく、しっかりとハーフパイプで遊べるようになることをまずは目指してください。

ジャンプに慣れてきたらぜひとも挑戦して欲しい最初の技がグラブです。ハーフパイプの場合、上半身が横になっているので、平地で掴みやすいグラブが簡単だと必ずしも言えるわけではありません。また、壁の左右によってやりやすさも変わってくると思います。グラブ自体のタイミングはスノーパークのジャンプ台の時と同様に、頂点で掴むようにイメージしましょう。ジャンプに余裕があればある程しっかりとグラブができるはずです。

五輪種目スキーハーフパイプ

スノーボードは1998年の長野五輪からの採用でしたが、スキーの場合は2014年のソチ五輪よりハーフパイプが正式種目となりました。ジャンプの高さと技の難易度を競い合う競技で、ソチ五輪では津田健太朗選手をはじめとする3名の選手が参加しました。そして、女子では小野塚彩那選手が銅メダルを取ったことは記憶に新しいでしょう。

国際大会などでは全長120~160m、左右の壁の高さは6m近いハーフパイプが一般的に使われています。アイテムのサイズアップとともに、技の難易度は近年急激に上がってきています。残念ながら、日本のスキー場には国際大会を行えるサイズのハーフパイプは多くありませんが、ソチ五輪での日本選手の活躍によって、増設されるという話もあります。今後も注目のハーフパイプにぜひ挑戦してみてください。

どんなところで練習できるの? 01/ウォータージャンプやトランポリンに挑戦

今やスキーの練習は冬だけに行うものではありません。安全に楽しくレベルアップできる練習施設がどんどん増えています。

着地での怪我が心配で怖くてジャンプできない。そんな人におすすめなのがこのWJ(ウォータージャンプ)という施設。着地がプールなので思い切って挑戦できます。大切なスキー道具を水に浸けたくない人にはレンタルも揃っているのでご安心を。
スキーを付けてジャンプなんてとんでもないと思う人にはトランポリンがおすすめ。日常生活では味わえない空中感覚を試してみましょう。短時間で何回も飛べるので、反復練習としても効果的です。全身運動なのでダイエット効果も期待できるでしょう。
参考施設:X-tech http://www.x-tech.co.jp

どんなところで練習できるの? 02/室内練習施設もバッチリ

スキー場となるべく近い環境を求めるなら、キッカーやジブ、ハーフパイプを備えた室内練習施設がおすすめ。普段使用している板やブーツで練習ができます。人工雪を保つために真夏でも氷点下のため、体感温度はゲレンデよりも低くなることもあるので注意しましょう。
参考施設:snova溝の口 http://snow.gnavi.co.jp/guide/htm/r0311s.htm
ここ数年で一気に数が増えている施設で、ブラシのアプローチと立体型エアマットのランディングによって、スキー場でのジャンプ台と同様の一連の動きが安全に練習できます。マットの破損を防ぐため、エッジは丸めてから使用する事になるのでご注意ください。

経験に基づく指導を受けよう!

いくつもの練習施設がありますが、正しい練習方法を知らないと効率のいい練習にはなりません。それどころか施設ではできたのにスキー場ではできないなんてことも。レッスンのプロから基礎をしっかり教われば、安全且つスピーディにスキルアップができます。

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