写真=ドムハウス

毎シーズン恒例の、SIAデモンストレーターキャンプに密着!

日本唯一のプロスノースポーツ教師組織SIA 公益社団法人日本プロスキー教師協会では、毎シーズン「SIAデモンストレーターキャンプ」というレッスン行事を開催しています。SIAデモンストレーターというのは、全国のプロの先生たちから選ばれたの代表の人のことで、言ってみればプロ教師の中のプロ教師ということ。スキーの上手さは当然ですが、指導力、人格などにも優れた人だけがなれるプロ中のプロなのです。そのデモンストレーターが直接レッスンを担当してくれるのが、このキャンプ。今シーズンは2020年2月8日~9日、長野県木島平スキー場で2名の女性デモンストレーターを迎えて開催されました。
【小上理恵デモ(木島平プロスキースクール所属)】
はつらつとした笑顔と分かりやすいレッスンで、いつの間にか上達させてくれるレッスンの魔術師です! インタースキーアルゼンチン大会日本代表

【湯下万里デモ(エコーバレースノースクール所属)】
ていねいできめ細かいアドバイスをしてくれる湯下デモは、アルペン競技出身。スキーの切れは見とれてしまうほど。インタースキーブルガリア大会日本代表
今回、レッスンを担当したのは湯下万里デモ(エコーバレースノースクール所属)、小上理恵デモ(木島平プロスキースクール所属)のお二人。このお二人、実はスゴイ経歴をお持ちなんです。まずSIAが毎年行っている「SIAデモンストレーター選考会」において過去に優勝経験があること。そして「インタースキー(世界のスキー教師が一堂に介し指導理論やスキー技術の発表を行う行事)」の日本代表に選ばれたこと。つまり名実ともに日本のトップデモンストレーターというわけなのです!

参加者は16人。レベル別に2班に分け、湯下デモが「ロングターン(大回り)」、小上デモが「ショートターン(小回り)」を担当しました。
*初日ロングターンレッスンだった班は2日目はショートターンレッスン、初日ショートターンレッスンだった班は2日目はロングターンレッスンに

実際にレッスンを担当したお二人のデモンストレーターにお話を聞きながら、イベントの様子をレポートしていきましょう!
雪が降り視界の悪い中でも、熱気あふれるレッスンを展開。安全なラインを選んで、できるだけスピードを出すトレーニングも行われました。
今回は上手な人が集まっていましたね。この行事はいつもこんなにレベルが高いのですか?

from 小上デモ

いえいえ、そんなことはありません。今回は特別でしたね。参加要項には、SIAシルバーもしくはSAJ2級とありますが、いわゆる中級者からでも問題ないんです。私たちSIAでは、初心者レッスンやキッズレッスンに力を入れていますし、決して上級者の指導だけに注力しているわけではないんです!

from 湯下デモ

今回はレベル分けをしっかり行って2班に分けました。スキー操作の質や滑走スピードを着眼点にして分けましたので、実際の講習で「ついていけない」といったストレスを感じずに楽しんでもらえたと思います。

レッスンって、何度受けても緊張しちゃうものですけど、今回の講習を見ていると、本当に和気あいあいというか、一生懸命技術探求しているんだけど同時にちゃんと楽しんでる、っていう空気感を感じました。

from 小上デモ

そう言っていただけると嬉しいです! 楽しみながら自然と上達したり新しい発見をするというのがレッスンの理想ですから。

from 湯下デモ

れから「安全」ですよね。今回は2日間とも視界が悪かったので、そんな中でもしっかり自分の滑りに集中してもらえるように、斜面選定やライン取りには気を付けました。

なるほど。だから皆さんリラックスして講習を受けられたんだ。
ふだん一人で滑っている時には、なかなかできない低速の基本練習も、レッスンではじっくりと行います。
湯下デモはロングターン班、小上デモはショートターン班を担当されました。それぞれ、どんなことをレッスンで展開したのか、改めて教えていただけますか?

from 湯下デモ

参加された人は皆さん上手でスピードも出せるんですが、ターン弧を滑らかに描けていないな、という印象でした。たとえば、スキーのエッジに頼ってあまり身体の運動を使っていなかったり、構えを作ることだけを考えていたり……。今のスキーって、すごく性能が良いので、身体を傾けるだけでカーブしてくれるのですが、そういう運動だけだとちょっと難しい斜面にいったときに急に滑れなくなったりしますし、スキーがどんどん加速していくようなシャープなターンにはならないんです。

そういえば、湯下デモの後ろを滑ると、どんどん離されちゃうって声も聞かれましたよ。

from 湯下デモ

木島平スキー場は滑りやすい斜面が多いのですが、そういうところだとあまり身体の運動を使わずに滑ってしまう人が多いんです。今回参加された皆さんも、スキーにしっかり乗れずに結果スピードも出ないという症状が見られました。だから、まずは身体を大きく使ってスキーの上で運動しましょう!ということをお話しました。

実際にレッスンでやった練習を、少し振り返ってもらえるとありがたいんですが。

from 湯下デモ

ひとつは、両方のストックをターンの内側に引きずって滑る練習です。上級者でも腰がずっと谷側(真下)を向いたままでスキーの向きに合わせて上体や腰を動かせない人が多いんです。小回りなら、そういう操作もアリですが、ロングターンでは上体や腰を谷側に向けたままだとスキーがシャープにカーブしてくれません。この練習で、スキーの推進方向に積極的に身体を向けていくイメージを持ってもらいました。もうひとつは、ストックを短く持って滑ることで脚の関節をしっかり動かす感覚をつかんでもらう練習。上半身の前傾を保つ練習としてもいいんです。スピードが出ると上半身が起きてきて、不安定になる人が多いですからね。

これらの練習って、上級者じゃなくても挑戦していいものですか?

from 湯下デモ

もちろん! ターンの基本は外脚荷重ですが、そこさえしっかり意識して取り組んでもらえれば大丈夫ですよ!

しっかりと外スキーに体重を乗せながら、両ストックをターン内側に引きずります。簡単そうですが、やってみるとなかなか大変。脚部の関節をしっかり動かさないと、内スキーに体重が乗ってバランスを崩してしまいます
ストックを短く持つだけで身体は動かしにくくなります。その状態でもしっかりとスキーに力をかけるには関節を大きく柔軟に動かすことがポイント。参加者の方は、外脚の関節が動かず突っ張ってしまいましいましたね。
小上デモはショートターン班でした。参加の皆さんに共通した欠点などはありましたか?

from 小上デモ

皆さんに共通していたのは、ポジションが後ろだということでした。スキーを履いて滑った時にちょうどブーツの真上に乗っている状態がベースとなるのが理想なのですが、ほとんどの人がブーツの後ろにややよりかかったようなポジションになっていました。これだとスキーのトップからテールまでをしっかり使って操作することができません。上級テクニックとして、ターンの後半にテール寄りに乗ってスキーを加速させるような動きもあるんですが、それもまずは基本ポジションができていての話なので。それから、上体の向きや角度がターンのたびに内側に傾いてしまう人も多かったですね。小回りでは、脚部のひねりを使って上体を谷側に向けながら、外スキーに乗っていく必要があります。

ストックを両手の上に乗せたまま滑る練習をやっていましたよね。これは、その練習ですか?

from 小上デモ

そうです。ストックを両手に乗せることで上半身を安定させ、そのうえで脚部のひねりを使います。上半身が安定していないとストックは落っこちてしまいますから。

かなり難しそうな練習ですね。。

from 小上デモ

かなりの上級者にも有効な練習ですが、今回はプルーク(ハの字)でやりましたから、それほど難しくはなかったと思います。でも、内側の手が下がり外スキーへの荷重があいまいになっているような人は結構いましたね。ストックを水平に保って滑れるようになると、ショートターンがずっとラクになるはずなんです。

それにしても小上デモのショートターンは、シャープで見とれてしまいます。あんなふうに滑れたら、どんなに気持ちいいだろうって。

from 小上デモ

ありがとうございます(笑)。スキーの性能が良くなっているので、以前に比べるとショートターンはマスターしやすくなっていますよ。ただし、焦って速すぎるリズムで滑っている人も多いので、そこは注意してほしいですね。自分で思っているよりもゆったりしたリズムで滑ったほうがスキーの動きもよくなり、結果的にスムーズで安全なターンになります。

右ターンの写真ですが、こうしてみると一目瞭然。両手の上に乗せたストックがターン内側に傾きすぎると、それだけ身体も内側に傾きすぎ、外スキーに荷重できません。小上デモは、しっかりと外スキーに乗れていますね
2日間にわたるキャンプでしたので、夜はビデオミーティングや懇親パーティで、だいぶ盛り上がりましたね。

from 小上デモ

そうですね。実は、SIAのキャンプは初めてという方がとても多かったんです。またお一人で参加された方もずいぶんいらっしゃいました。でも、皆さん、あっというまに打ち解けたようで、夜のテンションもまた高かったですね(笑)。

from 湯下デモ

ビデオミーティングでは、かなり突っ込んだ質問も飛び出したり、上手くなりたいという熱気がすごかったです。でもしっかりと笑いもあって、皆さんのスキー旅行の楽しみ方をよく知っているなという感じでした。

一人参加の方が何人かいらして、最初は物静かだったのに、どんどんテンションアップしていました(笑)。宿舎となった木島平ドムハウスには珍しいお酒がたくさんあったのも好評でしたね。スキー仲間を確実に増やせる雰囲気がいっぱいでした。
ビデオミーティングからの流れで懇親パーティに突入。話題はもちろんスキーのこと、と思いきや好きなお酒についても饒舌に語り合った参加者の皆さん。

参加した皆さんに聞いてみました!

「いろいろなキャンプに参加していますが、今回は女性デモということで、とてもきめ細かいレッスンが印象的でした。ロングターンでは、スキーをしっかりとたわませて性能を引き出すいう点を教えていただきました。ついつい上体の構えばかり作って滑っていたので、身体の運動によってスキーに働きかける感覚は新鮮でした。ショートターンでは、上体の安定をどう作るかを徹底的に学びました。あとはスピードですね。スピードを出して遠心力などを感じることで初めてできる操作があることを知りました」
有我信行さん。スキー歴約8年
「普段もスクールで小上コーチからレッスンを受けているので講習には慣れているのですが、今回は湯下コーチに初めて教えていただき、ああこういう感覚も生かせるんだと感動しました。私はX脚で、そこが悩みなんですが、内膝を返すように使うことで、両スキーが滑らかに動くという感覚を味わうことができました。練習としては手で内側の膝を押して動かすトレーニングが、自分には合っていたと思います」
川村のぶ子さん。スキー歴約20年
「いつもは戸隠フランススキー学校の佐々木常念デモのレッスンを受けていて、このキャンプのことを聞き参加しました。女性デモに教えていただくのは初めてでしたが、効率的な力の使い方など本当にさすがだなと思いました。自分の欠点である内倒(ターン中に身体が内側に倒れ過ぎてしまうこと)については、前半のポジションからストックワークまでいろいろな改善策を聞くことができました。また仲間を誘って参加したいと思わせるキャンプでしたね」
佐藤秀樹さん。スキー歴約25年
「小上コーチも湯下コーチも初めてお会いしたんですが、女性らしい気使いが感じられて素晴らしいレッスンでした。同じ運動を表現するのでもお二人それぞれの感覚があって、それを自分のなかで整理する作業が楽しかったです! 女性に多いX脚についての悩みも等身大で相談できましたし、またローテーション(ターン中に身体が曲がる方向に向き過ぎてしまうこと)対策も、いろいろな方法を教えていただけたので有意義でした。まさに楽しくて上達できるというキャンプですね」
井上陽子さん。スキー歴約25年

今後もSIAのイベントに期待!

SIAでは、さまざまな一般スキーヤー対象行事を開催していますが、今回のようなキャンプは今後増えていきそうですか?

from 湯下デモ

私たちはふだん所属しているスキー学校でレッスンをしていて、他のスキー場に出向くことは案外少ないんです。だから普段行かないスキー場で多くのスキーヤーの方々とご一緒できるのは本当に嬉しいです。シーズン中はデモも忙しく、なかなかイベント開催を増やせないとは思いますが、こういう機会がどんどん増えればいいなと思います!

from 小上デモ

私も同感です。これからは私たちデモンストレーター自身がいろいろな企画を提案したりして、スキー界を盛り上げなくてはいけませんからね!

どうも、ありがとうございました。
小上デモのシャープなショートターン。スキーが生き物のように動きます!
アルペン競技出身らしく、どんどん加速するロングターンを見せる湯下デモ。

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