日本最高額の賞金をかけた戦いが幕を開けた

「日本一スノーボードがうまいのは誰だ?」。ジャンルの垣根を越えた前代未聞の大会『SNOWBOARDMASTERS』(以下SBM)が2018年4月7~8日、赤倉観光リゾート(新潟県妙高市)で開催された。大会の発起人は文芸界の巨匠・東野圭吾氏。東野氏自身、シーズン中は30日以上雪山に足を運ぶ生粋のスノーボーダーであり、「白銀ジャック」「恋のゴンドラ」「疾風ロンド」「雪煙チェイス」など、雪山とスノーボードを題材にした数々の作品を世に送り出している。 スノーボードをそこまでよく知らない人からすれば「スノーボードは飛んだり回転したりするスポーツ」といったイメージが強く、そこばかりに注目しがちだろう。しかしスノーボードの魅力はそれだけではなく、本来雪の上を気持ちよくすべることにある。 世間とのズレに違和感を感じた東野氏は、ジャンプやスピンだけでなく、スピード、カービングテクニックやフォームなど、総合的に「一番スノーボードがうまいのは誰か」を明らかにする大会の発案に思い至ったのだという。 しかし、日本一うまいスノーボーダーと言ってもその評価方法は難しい。スノーボード史上、前例のない初の試みであるSBM。「バンクドスラローム」「フリーライディング」「ストレートジャンプ」の三種目を行ない、総合ポイントで雌雄を決した。 賞金は男子優勝200万円、女子優勝100万円とした総額435万円。群を抜いた日本最高額の賞金が用意され、名だたるライダー達が日本各地から集まった。

DAY1 » BANKEDSLALOM 一番早いのは誰だ!?

Photo : Yoshifumi Shimizu
限界ギリギリで攻める すべりは圧巻

全長約1kmのコースには、前半に蛇のように左右に長くうねるラインで20個のバンクセクション、そこを抜けると一気にラインを縦に落とし猛スピードでバンクに突っ込んでいく後半セクションが作られた。後半にはウェーブや巨大バンクなどもあり、前半で消耗した体力に追い打ちをかけるかのようなハードなコース設計だ。
Photo : Daisuke Shibata
前日の公式練習が強風によるゴンドラ運休で中止になったため、ライダー達は当日わずかな時間でコースチェックを行なったのみでのぶっつけ本番となった。 滑走本数は2本のベストタイムを採用。当日、風はおさまったものの天候は曇り空、時折雪が舞い、4月とは思えないほど冷え込んだ。それに加え、スタートから最初の旗門がやっと見えるほどの濃霧に覆われる始末。最悪の状況……とは、意外にもならなかった。霧が濃いのは前半だけ。後半のスピードゾーンにはほぼ霧はかかっておらず、クリアな視界が確保された。前半の濃霧に関してもさすがは名だたるライダー達、次の旗門が見えさえすれば問題はないとのことだった。 そして寒さもいい方向へ働いた。春にすべったことがある人にはわかると思うが、春の雪は気温が上がるとソールがペタペタと張り付くようなストップスノーになってしまう。
Photo : Daisuke Shibata
しかし当日は太陽が顔を出さず、気温がずっと低かったため、走る雪が保たれる結果となった。スタート順による雪質変化に悩まされる心配がなく、選手にとっては力が出しやすかったはずだ。ライダー達は1kmのコースを果敢に攻め、巨大バンクのG と戦いながら凄まじいスピードで駆け抜けた。現に運営側は事前にゴールタイム2分をギリギリ切った者が上位入賞に食い込んでくるだろうと概算していたが、蓋を開けてみれば男子はほとんどが2分を切り、女子のトップは1分50秒と大幅に予想を裏切られた。ある意味天候に助けられたとはいえ、この予想を超えたタイムはライダー達の高いポテンシャルに他ならない。ハードなコースを限界ギリギリで攻めるライダーのスピードは凄まじく、特に最高速に達するゴール直前のセクションは大いにギャラリーを沸かせていた。
バンクドスラローム順位表

【男子】
1位 元木康平(1分41秒07)
2位 小西隆文(1分42秒38)
3位 桜井陽平(1分42秒87)

【女子】
1位 本多未沙(1分50秒22)
2位 佐藤夏生(1分51秒50)
3位 山田恵 (1分57秒49)

DAY2 » FREERIDING 一番のテクニシャンは誰だ!?

Photo : Daisuke Shibata
雪上の異種格闘技戦 個性溢れるすべりの連続

フリーライディングコースにはフラットバーンの他、両脇に長く続くバンク、上部と下部に作られた起伏、ジャッジテントの目の前にヒップとしても使えるバンクなどが作られ、無数のラインが想像できるコースが用意された。ライダーたちはこのコースを文字どおりフリーにライディングし、基礎的なすべりから応用的なトリックまで、発想力とスキルを武器にスタイリッシュにすべり降りていく。そしてフリーライディングコースが終わると、そのままストレートジャンプ用に作られたキッカーへのアプローチが始まる。フリーライディングとストレートジャンプは別々にジャッジされるが、ライダー達は両種目を一連ですべり降りる。この競技システムもSBM ならではの面白さのひとつだ。 
Photo : Daisuke Shibata
通常ストレートジャンプの大会はスタート位置が大まかに決められている。そのメリットとしては①スピードが調整しやすい、②心の準備をしてスタートできる、といったものがあげられる。キッカーはちょうどよくランディングに着地できるスピードでアプローチすることが大前提。スピードが速すぎるとランディングを越えて飛びすぎるし、遅すぎるとランディング手前のフラットバーンに叩きつけられてしまう。そのため、スタート位置がリコメンドされていると選手はスピード調節に気を使う負担が減り、技に集中しやすくなる。 
Photo : Daisuke Shibata
しかしSBM ではフリーライディングからの流れでそのままアプローチに入っていくため、ライダーの感覚と経験が大きくモノを言うことになる。トリックのイメージ、心の準備を整え直す時間もない。その上でジャンプトリックをメイクできるか。それも「うまさ」のひとつだろう。意地悪な競技システムにも思えるが、そもそも自然の雪山に「マーカー」など引かれていないのだ。
Photo : Daisuke Shibata
競技が始まるとライダー達の個性が爆発したすべりの連続だった。SBMにはそれぞれ得意なジャンルをもったトップライダー達が集まっている。平昌五輪ハーフパイプに出場した片山來夢を筆頭にハーフパイプを得意とする者、同じく平昌五輪スロープスタイル・ビッグエア出場の広野あさみはジャンプのスペシャリスト、デモンストレーターをトップとしたテクニカル系ライダー、スノーボードクロスのプロ、ビッグマウンテン、ストリート、ムービースター、レジェンド……様々なカテゴリーのオリジナルラインとトリックは見ていて飽きない。カービングを得意とする者はこれでもかと深くキレのあるカービングでアピールし、ジャンプが得意なライダーはちょっとしたギャップでスタイリッシュに飛ぶ。同じスノーボーダーなのに異種格闘技戦を見ているようだった。個性溢れるすべりを見せる中でもバリエーションや意図しない減速などはシビアに採点され、確かな基礎滑走能力をもったライダー達が上位にランクイン。競技は一本勝負で行われたが、楽しさからかはたまた悔しさからなのかライダー達からは「もう1本すべりたい!」という声が上がった。
フリーライディング順位表

【男子】
1位 谷口尊人(278pt)
2位 元木康平(277pt)
2位 片山來夢(277pt)

【女子】
1位 本多未沙(271pt)
2位 加藤彩也香(269pt)
3位 西村春香(268pt)

DAY2 » STRAIGHT JUMP 一番のジャンパーは誰だ!?

Photo : Yoshifumi Shimizu
青空のもと1本勝負 どんな技を繰り広げるか

キッカーのリップからランディングまでの距離は12m。様々なカテゴリーのライダーが男女ともにパフォーマンスを競い、他種目の結果を踏まえての駆け引きを行なうには絶妙なサイズだ。前述の通り、ストレートジャンプはフリーライディングからの流れで一本勝負。少しのミスが大きく順位に関わってくる。ライダーはジャッジングポイントと他2種目の結果と出来(キッカーを飛ぶ時点ではフリーライディングの得点は出ていない)を加味してトリックを選び、決めきらなければいけない。まさにここが勝負の別れ目、大会のハイライトと言ってもいいだろう。スピード系やテクニカル系ライダーが一体どんなジャンプを見せてくるのか?というのもこの大会の見所のひとつだ。「このサイズのキッカーは久しぶりに飛んだ」というテクニカルライダーもいたが、そんなことを言いつつほとんどがきっちりと決めてくる。回転数や難易度こそ抑え目だが、グラブや全身を大きく使うことによってしっかりジャッジにアピールしていた。
Photo : Yoshifumi Shimizu
Photo : Yoshifumi Shimizu
Photo : Yoshifumi Shimizu
しかし、ストレートジャンプという競技の特性上その違いが目につきやすいということもあり、ジャンプ系を専門とするライダー達はずば抜けていた。まず最高到達点の高さと飛距離が明らかに異質。当然といえば当然なのだが、そのインパクトは強烈な印象を放っていた。しかもただデカく飛ぶだけではない。そのビッグエアにして高難易度のトリックを高い完成度でフルストンプしてくるのだ。天気は快晴、ギャラリーの目前、MC ジェシーの軽快な煽りを受けてライダーのフルストンプが大会のフィナーレを異常な熱気で包んだ。
ストレートジャンプ順位表

【男子】
1位 石田貴博(215pt)
2位 上原拓也(205pt)
3位 鈴木翔太(195pt)

【女子】
1位 小川輝(195pt)
2位 谷上加七子(190pt)
3位 犬塚幸子(185pt)

SBM初代王者は……

Photo : Yoshifumi Shimizu
Photo : Yoshifumi Shimizu
男女合わせて150名近くの猛者が全国からエントリーした第1回SBM。誰も結果を予想できない熾烈な争いの末、SBM 初代王者に輝いたのはストレートジャンプの圧倒的なパフォーマンスで全員の度肝を抜いた石田貴博。バンクドスラロームで64位と出遅れたものの、ストレートジャンプで他を圧倒し1位、フリーライディングでも基礎滑走能力の高さとスタイリッシュなすべりを見せ、大逆転での王座獲得。賞金200万円のボードを誇らしげにと掲げた。女子総合優勝は北海道から参戦した佐賀優輝。全種目において平均して高ポイントをマークし初代女王の栄冠と賞金100万円を手にし、「最高のコースをただ楽しくすべっていたらすべりが評価されて、感激しています!」と表彰台で喜びの涙を見せつつ笑顔で語った。「あなた達は全員うまい!」オーガナイザーとして大会を観戦した東野氏は閉会式で登壇した際、興奮気味に言い放ち、さらにこう続けた。「私はこの夢のような大会を一年で終わらせるつもりはないんです。もう何度か開催してもいいですか!」この一言によりさらに会場のボルテージは跳ね上がり、第1回SBMは熱狂のうちに幕を閉じた。きっと東野氏の言葉を聞いたライダー達は、来年に向けて消すに消せない燃え上がる闘志を己に感じたはずだ。早くも第2回SBMに心が踊ってしまう。
TOTAL RESULT

【男子】
1位 石田貴博
2位 稲村樹
3位 片山來夢

【女子】
1位 佐賀優輝
2位 小川輝
3位 広野あさみ

東野 圭吾の作品を見て、ウィンターシーズンに向けて気持ちを高めよう!

白銀ジャック

ゲレンデの下に爆弾が埋まっている
「我々は、いつ、どこからでも爆破できる」。年の瀬のスキー場に脅迫状が届いた。警察に通報できない状況を嘲笑うかのように繰り返される、山中でのトリッキーな身代金奪取。雪上を乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。すべての鍵は、一年前に血に染まった禁断のゲレンデにあり。今、犯人との命を賭けたレースが始まる。圧倒的な疾走感で読者を翻弄する、痛快サスペンス!

実業之日本社
A6判416ページ
2010年10月05日発売本体価格 648円+ 税

恋のゴンドラ

この恋の行方は天国か地獄か!?
同棲相手の美雪の目をかいくぐり、合コンでであった桃美とお泊りスノーボードツアー。広太は輝かしい夜を想像し、有頂天だった──。乾坤一擲のプロポーズ大作戦にうってでた日田。友人の水城の抜群のフォローもあり、あとは指輪を取り出すだけ──。真冬のゲレンデに集う男女8人の運命は、時に激しく、ときに甘く、ときには恐怖に彩られて交錯する。恋愛という永遠のミステリーは衝撃の結末に向かって疾走する。

実業之日本社
四六判264ページ 2016年11月01日発売 
本体価格 1200円+ 税

疾風ロンド

この冬最大の興奮!
拡散すれば人々を大量死に陥れる威力をもつ生物兵器K-55が盗まれた! 引き換えに3億円を要求する犯人からの手がかりは、スキー場らしき場所で撮られたテディベアの写真のみ。しかも犯人との交渉が突如不可能に! 圧倒的なスピード感で二転三転する事件のゆくえ、読者の予想を覆す衝撃の結末に酔いしれろ!

実業之日本社
A6判400ページ 2013年11月15日発売 
本体価格 648円+ 税

雪煙チェイス

にげろ!! そして謎の女神を探せ!
殺人の容疑をかけられた大学生の脇坂竜実は、彼のアリバイを証明できる唯一の人物─正体不明の美人スノーボーダーを捜しに、日本屈指のスキー場に向かった。それを追うのは「本庁より先に捕えろ」と命じられた所轄の刑事・小杉。広大なゲレンデを舞台に、予測不能のチェイスが始まる! 痛快ノンストップサスペンス。描き下ろし文庫!『 白銀ジャック』『疾風ロンド』で活躍の根津と千晶も登場!

実業之日本社
A6判416ページ 2016年11月29日発売 
本体価格 648円+ 税


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